キャバリアのかみ合わせ

キャバリアという犬種は皆さんご存知でしょうか?

日本での正式名はキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルと言います。(以下キャバリアとします)

比較的性格がよい子が多く、あどけない表情とよい毛並みを持ちます。

ただ獣医療に携わる人はどうしても病気の事を考えてしまいますが、病気が多い犬種のイメージです。

 

今回キャバリアの子犬の避妊手術と乳歯抜歯を行いました。

当院では避妊手術を希望される場合、乳歯の脱落の状況にタイミングを合わせて麻酔が一回で終わるようにご提案しています。

この子も下顎の乳歯の脱落遅延があり乳歯抜歯を行った子です。

下顎の永久犬歯が乳歯と同等の長さになっても乳歯の脱落が起きていません。

このままだと永久歯が上顎の歯茎にあたって穴が開いてしまいます。

 

左の上顎の乳犬歯も破折(折れて)います。

前歯の乳歯も残っており永久歯の位置が内側に生えてしまっています。

本当は前歯の事を考えるともっと早く乳歯を抜いたほうが良いのですが、

もともとこの子はアンダー気味の咬合(クラスⅢ 不正咬合?*)であったので犬歯のタイミングまで

様子を見ています。

*アンダーとは下あごが上あごに比べて長く本来なら上の前歯の内側に下の前歯が来るものが逆になる咬み合わせの事

*ブルドッグやフレンチブルドッグ等の短頭種ではアンダーが正常な咬合とされています。キャバリアにおいても情報が少ないですが一部の情報ではアンダーでもよく、成長に合わせて改善すると記載がありました。

 

この子の歯の異常をまとめると

・乳歯遺残 切歯、犬歯

・下顎犬歯の舌側変位

・クラスⅢ不正咬合

・乳歯の破折

がありました。

 

下顎の犬歯は上顎の第三切歯(前歯)の内側にあったので外科的矯正も考えました。

*外科的矯正とは位置が異常な

実際に乳歯を抜いて咬合を確認したところ、自然に犬歯の移動が起きれば問題ない範囲と判断しました。

その為外科的矯正は行わずこの症例に関しては乳歯抜歯のみで治療を行いました。

上顎の乳犬歯は歯根の吸収が起こっていたので時間がたてば抜けていたかもしれません。

翌日退院の際に確認したところすでに下顎犬歯はやや外側に変位していました。(顎の位置によるものかもしれません)

 

後日避妊手術の傷の抜糸に来られた時の写真がこちらです。

ほぼ犬歯の位置は正常に近いですが、右側の下顎犬歯は前歯と接触しています。

下顎が上顎対して長い為に仕方がないのですが、解消するためには上顎の切歯を抜く必要があります。

現状では生活に支障があるわけではない事と、

キャバリアが成長とともに不正咬合が治る場合があるという記載もあったので経過観察をしています。

今後この接触が続くと歯牙の摩耗が起きる可能性はあるのでその場合は抜歯も検討します。

 

〈本症例の記録〉
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル

6か月

5.3㎏

女の子

病名:乳歯遺残、不正咬合クラスⅢ

処置:抜歯(501.504.601.604.704.804)

麻酔時間: 20分

麻酔状態:安定

周術期の疼痛管理:メロキシカム

当日退院

 

 

心臓の悪いわんちゃんの歯科処置

今日は心臓の悪いわんちゃんの歯科処置を行いました。

小型犬では最も多い僧房弁閉鎖不全症という心臓病です。

心臓の中の左心房と左心室という二つの部屋の間にあるのが僧房弁と言います。

僧房弁は左心房の血液は左心室に流し、左心室からは左心房に血液が流れないようにしています。

その弁がうまく機能しなくなって血液が逆流してしまう病気です。

多くの場合は内科治療で重篤な肺水腫(肺の中が水浸しになる)などが出にくくする治療を行います。

僧房弁閉鎖不全症は急に起きるわけではなく、徐々に進行していく病気です。

初期には何も症状を出しません。

徐々に進行するにしたがって動くとしんどい様子が出たり、咳が出始めます。

進行の度合いはその犬によって異なりますので、寿命まで生きるわんちゃんもいます。

逆にどんどん進行して肺水腫や心不全で亡くなる子もいます。

 

今回処置を行ったわんちゃんは、咳の症状がある僧房弁閉鎖不全症のわんちゃんです。

8歳の男の子です。体重は約4㎏です。

心臓が悪いという場合麻酔がかけれないと思いがちですが、すべての犬でかけれないわけではありません。

この子の場合は逆流の程度は中程度で、不整脈もなく血圧も維持していました。

また運動不耐性もない状態でした。

もちろん何も病気がない子に比べればリスクは高くなります。

お口の状態は麻酔をかけずに観察した状態では犬歯の歯茎が後退しているのが見えました。

歯石の量は中程度で口臭はそれほどありませんでした。

 

この子の場合考えないといけない事は

①僧房弁閉鎖不全症は進行性で今後麻酔のリスクはどんどん上がる

②今の時点で歯周病の進行がどの程度かは不明(麻酔下で検査をしないとはっきりわからない)

③歯周病はほっておくと進行する。歯がぐらついて食べにくくなったり、歯周病による炎症が体に悪影響を及ぼす。場合によっては心臓病の悪化の要因になるかもしれない。

これらの事を飼い主様と相談して、歯科処置をすることになりました。

下の写真のように犬歯や奥歯の歯茎は腫れていました。

歯石もついています。

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通常どおり歯周ポケットの検査を行い、必要な部位のレントゲンを撮りました。

幸い重度の歯周炎を起こしている部位はほとんどなく抜歯に至る歯はありませんでした。

ただ、下顎の前歯(切歯)は叢生(歯並びが悪い)でした。

また上の前歯は回転歯で、歯根も曲がっていました。(黄色の矢印)

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下のあごの全臼歯は数が足りず(欠如歯、欠歯:矢印)、乳歯の遺残(丸で囲った歯)も見られました。

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SRP(スケーリング、ルートプレーニング)を行い無事終了しました。

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今後頑張って歯磨きをしていただき、歯周病にならないようにケアをしていただくようお伝えしました。

〈症例の記録〉

  • ミックス
  • 8歳
  • 去勢 男の子
  • 4㎏
  • 基礎疾患:僧房弁閉鎖不全症、椎間板ヘルニア
  • 処置:SRP
  • 麻酔の状態:安定
  • 処置時間 1時間20分
  • 使用機材
    • モリタ歯科ユニット
    • モリタエックス線装置
    • ウッドペッカー超音波スケーラー 歯肉縁下チップ装着
    • ケアストリームデジタル歯科レントゲン(イメージングプレート)

 

 

 

 

 

小型犬の歯周病

わんちゃんのお口の隅々まで見ていますか?

今回処置をさせていただいたわんちゃんは前の方の歯は比較的きれいだったのですが、

後ろの方の歯が歯周病で抜歯が必要になったわんちゃんです。

ポメラニアンやチワワなどの顔が小さいわんちゃんでは、一番後ろの歯とほほの内側にほとんど隙間がないわんちゃんがいます。

そのような子はその部分に歯垢が滞留しやすく歯周病になっていることがあります。

この部分は頑張って唇を広げて見ないと観察できません。

この子のように前の方の歯が比較的きれいだとより発見が遅れる事があります。

幸いこの子は定期的に当院を受診されていましたので、大事な上の第四前臼歯といわれる歯を失う前に処置をすることができました。

小型犬を飼われている方はぜひ定期的にチェックをしてもらいましょう。

 

今回処置を行ったのは2歳のポメラニアンです。

まだ2歳ですが歯周病がありました。

犬歯は歯肉炎はありますが、歯石はごく軽度です。

しかし奥歯の歯茎は腫れて、赤黒くなっています。

また歯石も多く、歯と歯茎の隙間に白いねばねばした歯垢がついています。

口臭は軽度で、近づいて臭わないと感じない程度でした。

麻酔をかけてプロービングで歯周ポケットの深さをチェックしました。

この部位で約5㎜の歯周ポケットがありました。

レントゲンは分かりにくいですが歯槽骨の垂直骨吸収が見られます。

近心口蓋根の歯根長の2/3以上に及んでいます。

写真の右側の歯の根っこの周囲の骨が溶けている状態でした。

犬の歯では特に写真の左側の歯が大事になります。

この子は歯磨きが今のところできないわんちゃんでした。

右側の歯を残しておくと歯周病が広がり左側の歯がダメになってしまいます。

その為右側の歯はぐらついてはいませんでしたが抜歯をすることにしました。

 

まず、局所麻酔を行います。

歯石を取った後、歯と歯肉の付着をメスで切開します。

この歯は根っこが三つある三根歯と呼ばれる歯です。

それぞれ一個の根っこになるように歯を切っていきます。

歯周病が重度の根っこは歯を分割するだけでグラグラしますのでそのまま抜去します。

また歯周病がほぼない根っこはエレベーターと呼ばれる器具でグラグラするまで歯を支える靭帯を切っていきます。

全部の歯が抜けたら抜いた穴をきれいにして歯ぐきを寄せて傷を閉じます。

 

他の歯も歯石を除去し、歯肉の裏側の歯石などを取りました。

しっかり研磨して歯石の再付着を防いでいます。

最終的にはこのようになっています。

ちなみにこの子は7か月の時に歯並びの調節の為に上の前歯は左右一本ずつ抜いています。

 

本来ならこれ以上歯周病が進行しないようにするために歯磨きが必要です。

ただ、今この子は口の周りを触ると怒るそうなので歯磨きはできないとのことでした。

そこで、とりあえず何もしないよりは効果は低くてもできる事をするために歯磨きガムを試してもらうことにしました。

歯磨きガムに関してはまた改めて詳しくご紹介しようと思いますが、

使い方、選び方を理解して使えばある程度の効果は期待できます。

特にこのように奥歯だけが汚れやすい犬は歯ブラシと併用することでより効果的です。

この子はオーラベットのXSを試してみてもらう予定です。

 

まとめ

・小型犬は若い時でも歯周病になっている場合があります。

・こまめにチェックが必要です。

・見えるところが大丈夫でも見えないところが悪い場合があります。

 

〈本症例の記録〉

ポメラニアン

2歳10か月

2.5㎏

女の子

病名:歯周病

処置:抜歯(209)、SRP

麻酔時間: 1時間30分

麻酔状態:安定

周術期の疼痛管理:メロキシカム、リドカイン

当日退院