歯磨きができるわんちゃんのお口の様子
2020年2月3日
本症例の記録
犬種:ミックス
性別:オス
年齢:5歳
体重:14㎏
- 病名:健康な歯肉
- 処置:飼い主様の歯ブラシによる歯磨き
わんちゃんのお口のトラブルで最も多い歯周病(歯石ではない)で大事なのは何よりもブラッシングです。
歯周病の原因である歯肉(歯ぐき)の隙間のプラーク(歯垢)を取れるのは今も歯ブラシしかありません。
この記事では歯磨きができる子のお口の紹介をさせていただきます。
ぜひ歯磨きを頑張るきっかけにしてください。
この子は5歳の雑種の中型のわんちゃんです。
日頃から歯磨きをしているわんちゃんの口腔内
飼い主さんが歯磨きをしっかりされています。
汚れていると思われた方もいるのではないでしょうか?
確かに奥歯には歯石が付着しており明らかに茶色くなっています。
もちろん、歯石はないに越したことはないのですが実はこのように歯ぐきから離れている歯石は歯周病にはほとんど関係しません。
多くの飼い主さんや動物に関わる職業の人、また獣医師の一部でも誤った認識が広がっており、いわゆる『歯石除去』が歯周病の主な治療と思われています。
しかし、歯周病を考えるうえで非常に大事なのは『
プラーク(歯垢)』です。
そして、
歯周病を治すのに必要なのは『プラークコントロール』+『歯肉溝もしくは歯周ポケット内の清浄化』です。
乱暴な言い方をすれば、歯ぐきに触れない歯石は取らなくてもこれらの事ができていれば歯周病は治ります。
逆に見えている歯石だけ取っても歯周病は治りません。
この子は見えている歯石はほとんどない子ですが実は重度の歯周炎に侵されていました。
ガーゼでの歯磨きを頑張られていた方です。
*歯周病が治る:正確に言うと歯周病の病態によって元の正常な状態にはならないのですが、それ以上の進行がない状態も治ると表現しています。
もう一度、歯磨きができている子のお口をよく見ていただきます。
汚れている奥歯ですが、歯ぐきの際にはほとんど歯石がないのがわかるでしょうか?
歯周病は『歯の周りの病』なので、見るべきポイントは歯肉(歯ぐき)です。
歯ぐきが引き締まって、きれいなピンク色です。
一方、歯周病の歯肉は赤く腫れているように見えます。
さらによく見ると
ねばねばした白いプラーク(歯垢)が見られます。
なんとなく簡単に取れそうじゃないですか?
プラークはねばねばした水垢のようなものなのでそれほど強くこすらなくても除去できます。
この
プラークを歯と歯茎の隙間から取り除くことが歯周病を防ぐために一番大事な事になります。
このプラークを取り除くことを『プラークコントロール』と言います。
なぜコントロールかというと、プラークは0の状態を維持することはできないからです。
歯磨きが終わった後、次の歯磨きまでの間に再び形成されてしまうのでコントロールといいます。
毎日の歯磨きが大事だということです。
ぜひすぐにでも歯磨きに取り組んでいただき歯周病を防いでいきましょう。
*本記事作成にあたり写真を使用する許可をいただいた飼い主様およびわんちゃんに感謝いたします。少しでも歯周病に苦しむ子が少なくなるよう今後ともご協力をお願いいたします。
この治療を担当した獣医師
獣医師 樽野 謙太 /
たるのどうぶつ診療所(院長)
鳥取大学2008年卒、岡山県内の動物病院を勤務、2014年たるのどうぶつ診療所を開院。
動物歯科診療をはじめ、ワクチン予防接種や一般的な動物診療など幅広く診察を行っています。
治療を通してわんちゃん・ねこちゃんとのより良い関係を築いてほしい。
そのような想いをもってより良い獣医療の提供に努めています。
資格 |
獣医師免許
日本小動物歯科研究会レベル4認定
ペット栄養管理士
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