皆さんわんちゃんには骨をあげてもいいと思っていませんか?
実はわんちゃんに骨をあげると歯が壊れることがあります。
骨に限らず「ひづめ」や固いおもちゃ、石、一部の歯磨きガム等でも危険です。
手で曲げてみて曲がらないようなおやつ、おもちゃ、ガムはあげないでください。
では実際に硬いものを咬んで割れた子の症例を紹介します。
この子は普通にペットショップで売っているひづめをあげていました。
喜んで噛んでいたそうです。
健康診断で来院された時にチェックするとこのように右側の上の奥歯が折れていました。
*歯が割れることを『破折』と言います。
こちらは左側の正常な奥歯です。
典型的な平板破折を起こしています。
これは奥歯の破折で多くみられるもので上の歯と下の歯が交互に噛み合わせるために
固いものを噛むと上の歯に外向きの力がかかることが原因です。
この子の場合折れている破片は一部残っており、その間に汚れがたまっているため
折れてから時間がたっていると考えられました。
また、観察できる範囲では歯髄(神経)が出ていることは確認できませんでした。
外歯瘻や内歯瘻も見られませんでした。
破折片の内側で歯髄が出ていた場合は重度の痛みがあり、今後目の下が腫れたりすることが考えられます。
また歯髄が出ていないとしても、歯髄までの象牙質が薄い場合は細菌感染を起こすことがあります。
また象牙質が出ていたり、歯髄が近い場合はやはり痛みがあると思われます。
この子の場合は破片が歯の根っこの付近、歯肉の奥まで達している為そこから歯周病がひどくなることもあります。
この場合の治療の選択肢としては大きく分けて
①歯を修復して残す
②抜歯
になります。
①の場合メリットは
・歯を残してあげれる
・奥歯の機能を残すことができる
・見た目も正常に近い状態にしてあげれる
・対側歯の汚れが付着しにくくなる
事があげられます。一方デメリットとしては
・100%治せるわけではないので経過観察(レントゲンでのチェック含む)が必要
となります。
②の選択肢の場合はこの逆になります。
今回、はいろいろご相談し抜歯となりました。
この選択になった一番の要素は、犬種がキャバリアという事です。
キャバリア(キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル)はACVIMの僧房弁閉鎖不全症のステージングにおいて
生まれながらにしてステージ1に入っています。
つまり、将来心臓病になる可能性が高いということです。
歯を残す治療をしたとして数年後に問題が出てくることもあります。
そうなったときに心臓が悪い可能性が他の犬種より非常に高いため抜歯を選択しました。
麻酔をかけて状態を確認したところ、神経は出ていませんでした。
見えていた割れたかけらは歯の根っこの一部まで達していました。
処置後も問題なく過ごしていますが、残念ながら右の奥歯では噛めなくなりました。
*わんちゃんの歯は主に食べ物を飲み込める大きさに切り裂くためにあります。ですのでドライフードなど小さいものは問題なく食べることができます。
このように歯を壊してしまうケースは非常に多いので皆さんくれぐれも固いものをあげないようにしましょう。